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RAIN

第10章 裁かれた母子の行末《拓海side》

「お袋は俺と姉貴のよき理解者だと思う。姉貴はうるさいのがたまにキズだけど、でもまぁ姉貴なりに俺を心配してるのはわかってるし……。なんだかんだ言っても俺はあの家族でよかったとは思ってるよ」
幸せそうに語る翔にますます羨望の眼差しを送ってしまう。

「ね、もしよかったら拓海さんの家族も聞いていいかな?」
邪気のない好奇心が俺に向けられる。

俺はまた口ごもり、戸惑いを隠せなかった。
だけど翔にだけ一方的に聞いて、自分は何も答えない訳にはいかない。
ただ俺の中には会って間もない人間に話すには大きな躊躇がある。
それは過去を話したら翔が離れてしまうのではないかという不安からだろう。

翔の屈託のない表情を伺い見る。
彼は純粋に俺に興味を抱いている。その様子がありありと表現されていて、俺は何度目かになる溜息を吐くと、諦めにも似た感情を抱きながら俺の家族を話そうと、翔に真顔で向かい合った。


「……俺に家族はないんだ」
そう告げれば途端に翔が驚愕し、顔を歪め始めた。



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