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RAIN

第6章 拒絶《拓海side》

「あ、ほんとに迷惑かけまくっちゃってすいません」
頭を下げる神崎くんに、俺はいや、と一言述べるだけに留まった。

「またもしよかったら遊びに行っていいですか?」
何気ない親愛を込めた台詞に、俺は息苦しくなってくる。



やめてくれ。もうそれ以上、何も言わないでくれ。無邪気に声をかけないでくれ。親しみ込めて接しないでくれ。

「あの……、北条さん……?」
俺から発する雰囲気の異変に気づいたらしい神崎くんが、はじめて心配した表情をみせた。
「……ごめん……、もう俺に関わらないでくれ」
やっとそれだけを口に乗せることができた。

え、と声にもならない声が漏れた。神崎くんの驚愕からすぐに顔が歪み、泣きそうな絶望的な顔で俺を凝視していた。信じられないと訴えていた。


そうだ、俺は彼を傷付けた。そうなるように仕向けた。
なのにまっすぐ神崎くんに向けない。自分から仕掛けたのに、臆病な俺は神崎くんの傷心した表情を直視することができなかった。
なんて愚かなんだろう。俺は人間失格だ。


『あいつに近づかない方がいいぞ』
『あいつは人間じゃないからな』
『あいつと関わると酷い目にあうぜ』

ふと脳裏に過ぎった、誰ともしれない声。
嗚呼、言われなくてもわかっているさ。誰に言われるまでもない。自分が一番承知している。
俺は人を愛する資格なんてない。いつだってどこにいたってそれは変わらない。
だって俺は他人を不幸にしてしまう。他人だけじゃない。家族にすら俺は不幸を与える。愛情を求めてはならない。求めると相手が不幸のどん底に堕ちてしまう。




『――だってあいつは“死神”なんだから――』



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