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異種間恋愛

第6章 アスリアス王国の秘密

 気がつくと私はトンネルの入り口にいた。
 こちらは太陽の光で眩しすぎて、自然と陰を求めてトンネルの中へ歩を進めた。
 トンネルの中は真っ白だけど、眩しいというよりは落ち着く。落ち着くのはトンネルに包まれているからかもしれない。
「リア」
 誰かの呼ぶ声が聞えた。呼んだというよりは呟きに聞えたが。
 よく聞き慣れた声、優しい声だ。
 声はトンネルの奥深くから響いてきた。私が目をこらして声の主を探せば、白い背景と同化するような白い肌の青年が現れた。
「ストラ」
 ストラスが私の方に向かって走ってくる。こんなに必死で走っているストラスを見たのは久しぶりかもしれない。
 私が昔、迷子になった時以来だ。あの時もストラスはこんな風に必死に走ってきてくれた。汗で全身を濡らし、息も絶え絶えになっているというのに私を見つけた瞬間顔の筋肉を一気に緩ませ、怒るでもなくただ抱きしめてくれたっけ。
 そんな優しいストラスが大好きだった。
 だけど、今トンネルにいるのがストラスと知った時にがっかりしている私がいた。
 誰であってほしかったのか分からない。頭に薄い蜘蛛の巣が張り巡らされているようで考えることができない。
 ストラスより、私が慕っている人なんていないのに……誰だったらいいと思ったの?
「リア、リアっ」
 ストラスが一生懸命走っているのに、私には全く近づいてこない。そんなに距離はないのにどうしてだろう。むしろ少し遠ざかったような気もする。
 とうとうストラスは疲れ切ったのかその場で崩れ落ちた。嗚咽が聞こえる。あのストラスが泣いているなんて……でも、あれ? つい最近も泣いているストラスを見たような。
 でも、こんなにがむしゃらに泣くのを見るのは初めてだ。

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