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ガーディスト~君ヲ守ル~

第14章 それぞれの道

「あたしはそれから、バイクが嫌いになった。あんなに好きだったのに、お父さんが乗ってたバイクでさえも見れなくなって…。

でも、お兄ちゃんは違ったの。
これは父さんの形見だからって、乗ってあげないとこいつが悲しむからって…」



祐司はドゥカティに乗っていた直樹の姿を思い出した。



(あれは父親の形見のバイクだったんだな…)




「お父さん、よく言ってた…公道はサーキットじゃないって。スピード出したいならサーキットで走れって。

お兄ちゃんは今でもその言いつけを守ってる。そんな大切に乗るお兄ちゃんを見ていくうちに、最近あたしのバイク嫌いも薄れてきてさ…高校卒業して、初めてバイトしたお金でヘルメットをプレゼントしたの」



直樹がかぶっていた『TSUBAKI』と書かれたヘルメットのことだ。



「…正直、あたしはバイクに乗るのがまだ怖い。だけど、お兄ちゃんのことは応援したいし、守りたいと思う。
そんな願いを込めて、ヘルメットにしたんだ」



そう言って、つばきはニカッと笑った。



「…つばきは強いな」



「そんなことないよ、でもきっと…守りたいと思う存在がいるから、強くなれるのかな…」



「な~んてね」と照れくさそうに舌を出すつばきに、祐司は一瞬目を見張った。



(つばきの言うとおりだ…)



大切な人を想うからこそ、人は強くなれる…



今までの俺には、そんな存在はなかった。
ただ漠然と生きてきた…



だけど…



俺にとって大切な存在が目の前にいる。



もし許されるのなら…



俺は…





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