テキストサイズ

ブルースカイ

第8章 恵(上)

「治るらしいから、精神科行ったがええで。」





「機会があったら行ってみるわ。」





そう返事をしたものの、その後、2006年まで精神科にかかる機会はなかった。





「聡、俺、大学辞めて、岡山に帰る事にしたん。」





「そっか。色々世話になったわ。」





「こっちこそ。聡、最後に言いたいんやけど、美香との思い出は忘れてほしないけど、いつまでも彼女としての美香にこだわりなや。美香はもうおらんねん。」





俺は返事をできなかった。当時の俺に、美香が残したものは傷痕。実はこれしかなかった。だからこそ、何て言いようもなかった。





「ほな、元気でな。」





ゆうちゃんは伝票を持つと、立ち上がり帰って行った。フミも黙ったままだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ