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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

「だから、あたしの言いたいのは、こういうこと。さっきのおじいさんは、お化け屋敷のスタッフで、あたしたちは、ただ仕掛けに驚いただけだっていうの」
「そ、そうなのか」
 あー、何だよ、こいつ、本当に泣きそうになってるよ。
「だからさ、そんなに怖がらなくても平気だって。第一、ここはお化け屋敷の中だよ? かえって仕掛けの一つや二つ出てこない方が不自然でしょ」
「で、でも、真美。あのじいさんの顔、本当につるんつるんで、顔がなかったぞ」
「そんなに今の特殊メークで、どうにでもなるよ。あたしらはまんまと騙されたんだよ、それだけ」
「う、うん。そうだな、そうだよな。これだけ文明の発達した時代に、お化けなんてあり得ないよな」
 私の言葉を信じたというよりは、何とかして信じたいから信じたーというように見えなくもない高志だ。どうも、無理に自分に納得させているようである。
 まあ、とにかく高志が泣き出さなければ、今はそれで良い。

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