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第19章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 1

斎が何故、そういう事を知っているのか、の疑問も浮かんだけど、

「巧妙に隠されてる。否、隠されていた、だな。俺と関わって、目をつけられたことに変わりない」

何となく、質問できる雰囲気じゃない気がして、黙って聞いていた。

「危険に晒した、という点では、間違えたのかも知れないが・・・」

そこで言葉が途切れ、沈黙が訪れる。

「が?」

見つめ合う距離で、斎を改めて見る。視線が、絡まる。

「危なくなったとしても、逃がしてやる気は無いから、覚悟しろ」

なんの、覚悟?というのは無粋なのかも知れない。考えず先延ばしにしている今後の事・・・だ、と簡単に予想はついたから。

「邪魔な奴ら追い払って、近いうちに、ここから出る。だから」

近付く唇。お互いの唇が触れるか触れないか・・・の距離で。

「俺だけ見てればいい。絢乃は」

妙にくすぐったい気がする台詞を斎は口にして、そのまま口付けを交わした。

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