君がくれたぬくもり
第45章 逃走
――――ガラガラガラ…
静かに襖を開け、廊下を見る。
「誰もいない…な。」
そう確認し、陽菜の手をギュッと握る。
陽菜はその手を離さないよう、しっかりと握った。
時刻は深夜2時…
みんな寝静まったのだろう。
息が詰まるくらいの静けさだった。
大きな屋敷内をぐるりと徘徊し、立派な庭のある縁側にたどり着いた。
二メートルほどの高さの瓦の塀がある。
「陽菜、俺を踏み台にしてここから外に出な。」
「えっ…で、でも……!」
「早くしろ。」
岳は陽菜を抱き上げる。
しかし、陽菜はあることを思い出した。
だめ……
このまま逃げられない。
「何やってんだよ早く…」
「岳だめ……陽菜、行けない…」
「はぁ?」
「幸子さんも…幸子さんも助けなきゃ…!」
そう……
幸子さんも。
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