君がくれたぬくもり
第41章 誘拐
その時鍵のかかっていたドアが開き、
一人の派手な男が出てきた。
「早紀、指名だ。」
早紀と呼ばれる女の人はけだるそうに立ち上がると、フラフラと男のいる方に歩く。
ドアが閉まった。
カツ、カツ、というヒールの音が消えると、幸子さんは陽菜にそっと耳打ちしてくる。
「早紀には次期財閥当主の婚約者がいたの。
でも相手の両親が早紀を受け入れなかった。
というのも、早紀の実家は父親が昔、人を殺めたから…とか。
それでも諦めない早紀を疎ましく思って早紀を売り飛ばしたらしいわ。
それで早紀はショックからなのか、笑わなくなったの。」
「酷い……」
陽菜は開いた口が塞がらなかった。
結婚を諦めないから売られた?
おかしいよ…
もっとやり方あったじゃん…。
「そういえばあんたの名前聞いてなかったね。」
「…陽菜です。」
「陽菜、ね。」
幸子さんはニコッと優しい笑みを浮かべた。
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