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倫は日本に帰ってきた。気がかりだったのは帰国直前に何度もアドニスに電話しても繋がらなかったことだった。倫は一抹の不安を抱えながらも、アドニスに直接行って、ママをびっくりさせてやろうと期待していた。成田から直接、時差ボケなど関係なく、倫は新宿まで荷物を持って直行した。
アドニス…懐かしいアドニス、今度こそ真面目に働いて自立するんだ。倫の心は決まっていた。
アドニスは三丁目に近い二丁目の端のロックバーの隣りにあったのだが…その場所にあったのは新しい外観のミックスバーだった。倫は驚きのあまり、「ママ…ママ！」思わず叫んだ。アドニスが…ない！倫はあまりのショックでその場に崩折れた。…アドニスが…ない！ミックスバーの店員が心配して声をかけてきた。倫は聞いた。アドニスは半年前に店をたたんだのだと。何故？何故？倫はこまめにママに連絡しなかったことを後悔した。「…何があったの？」倫は聞いた。「オーナーが死んだと聞きましたよ、」（旦那様が…）倫は再びショックを受けた。「ママは…それでどうなったんだろう…」「さあ…そこまでは…」店員は答えた。とにかく、アドニスは消えた。倫は何も考えられなかった。そして倫はほぼ一文無し状態だった。倫は路地裏に座った。すぐにサラリーマン風の中年の男が声をかけてきた。倫は自分を売るしかなかった。寝泊まりは毎晩客にさせてもらった。（どうして…）倫の心は秋の景色同様に暮れて行った。（仕事をみつけなくちゃならない…これじゃなにも変わらない…）倫は悔しくて、空しさでいっぱいになった。