
たまゆらの棘
第2章 燃ゆる日々
「卒業したんだろうな…たぶん」そう言って、仕事の合間の休憩だと、煙草をくゆらせながら男は言った。「うん。多分ね。」倫は興味なさげに答えた。「谷口」というアパートの表札とコピーライターだと言う事しか、その男について知らなかった。倫は昨日、この男の顔もわからぬ暗い土手で、出会った時、もうこの男をターゲットに決めていた。
「警察いくかあ?」あの土手で谷口は大きな声で倫に言った。倫が何も答えないでいると、谷口は自転車から降りて、倫の近くまで、ゆっくりした足取りで来ると「靴も履いてないのか。…コートも着てない。こんなに寒いのにな。」倫は激しく走った為、激しくむせび泣いた為、寒さを感じていなかった。
「俺んち、来るかあ?」谷口は仕方なしとでも言うように、さっきよりも大きな声で言った。
谷口のアパートに着くと、倫はそのころになって寒気を覚えた。谷口は部屋の灯りを付け、「入れよ。と…まて。」ガタガタと震えている倫に気付いた。そして灯りをつけたことで、その、乾いた涙の下の美貌を見つけ、驚いた。が、「震えてるな。ちょっと待て。それにお前、足、汚ねーし。」そう言って自分のコートを玄関まで持ってくると倫に着せた。「待ってろ、風呂わかしちゃる。」と言ってぱたぱたと動き回った。そしてまた、大きな声で言った。
「えらいもん拾っちまったなあ、俺!」
「警察いくかあ?」あの土手で谷口は大きな声で倫に言った。倫が何も答えないでいると、谷口は自転車から降りて、倫の近くまで、ゆっくりした足取りで来ると「靴も履いてないのか。…コートも着てない。こんなに寒いのにな。」倫は激しく走った為、激しくむせび泣いた為、寒さを感じていなかった。
「俺んち、来るかあ?」谷口は仕方なしとでも言うように、さっきよりも大きな声で言った。
谷口のアパートに着くと、倫はそのころになって寒気を覚えた。谷口は部屋の灯りを付け、「入れよ。と…まて。」ガタガタと震えている倫に気付いた。そして灯りをつけたことで、その、乾いた涙の下の美貌を見つけ、驚いた。が、「震えてるな。ちょっと待て。それにお前、足、汚ねーし。」そう言って自分のコートを玄関まで持ってくると倫に着せた。「待ってろ、風呂わかしちゃる。」と言ってぱたぱたと動き回った。そしてまた、大きな声で言った。
「えらいもん拾っちまったなあ、俺!」
