Memory of Night 番外編
第4章 Episode of AKIRA
いつだって宵と会うと、志穂の体調や状態を詳しく教えてくれたし、いろいろなことに気を配ってくれた。
宵はそんな彼女をとても信頼していたし、好きだった。
そしてもう一つ。
彼女の言葉で、忘れられないものがあった。
――私にも、宵くんと同い年の息子がいるのよ。
志穂が検査に出かけている時、真っ白い部屋でシーツを直しながら晃の母親は言った。
――こんな仕事をしてるから、あんまり構ってあげられないんだけどね。
看護師は、人差し指をそっと口元に当てて、曖昧な笑顔を浮かべ言った。
――放っておかれるのは、きっと寂しいものよ。
それはおそらく、なかなか志穂の見舞いに現れない宵への陰ながらの忠告だったのだろう。
あの頃の自分もなんとなくそれを察していた。
けれどもやはり頻繁に病室を訪れるのは気恥ずかしく、代わりに志穂にトランプをプレゼントしたのだ。
そんなことを晃に説明すると、晃はつかの間宵の顔を見つめ、こっそりと耳打ちする。
「……俺の母親と不倫はやめてね」
「しねーから! そういう意味の好きじゃねえ!」
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