テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


「最低だろう?」


 自嘲気味につぶやいて、横目でちらりと宵を窺う。

 宵は何も言わずに灰色の瞳を晃に向けているだけ。 

 気持ちの読み取れない、表情があまりない顔で見つめられるのは少し怖かった。

 こんな話をして、一体どう思われるのだろう。

 けれども宵のそんな表情は、同時に出会ったばかりの頃を思い起こさせる。あの時も彼はそういう顔をしていたのだ。


「続き」


 短く促され、晃は苦笑した。


「面白くもなんともないだろう? こんな話」


 それでも話すと言ってしまったのだから、途中放棄をするつもりもないけれど。

 続きを話そうと晃が再び口を開きかけた時、遠くで声が響いた。


「わー何この人形! すごぉいリアルー!」


 女性の声だ。

 どうやら客が入ってきたらしい。


「とりあえずここ出ようか。邪魔になるし」


 狭い通路だ。今までは客がいなかったから良かったものの、人とすれ違うのが大変な場所なのだ。

 だいたい、立ち話をするところでもない。

 晃は店を出るべく先ほど来た通路を引き返した。宵もその後に続く。

 美しい人形が並ぶ店を出てから、思考をまた昔へと戻した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ