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Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


「いつも放ったらかしでごめんね。これで晃の好きな物を買ってね?」


 母親の、イヤミのない優しげな瞳を見る度に、酷く悲しい気持ちになった。

 自分の両親は、きっと晃が喜ぶと思ってそのやり方を選んだのだろう。

 そこにはきっと、疑いようのない確かな愛情が込められている。それでも晃には、愛情を物品や金銭で埋めるやり方を好きにはなれなかった。

 高い物なんていらない。おめでとうの言葉と、手料理だけで充分だったのに。

 不満は結局口に出せぬまま、溜まった鬱憤を晴らすように物欲に任せて物を買った。

 次第に部屋に蓄積していく玩具の山や、通帳の中で無機質に増えていく冷たい数字に、慣れてきてしまっていた。

 欲しい玩具をねだり、飽きれば部屋の隅に放置。ガラクタばかり溜まっていく。

 元から金に怠惰なところがあった両親は、そんな息子の態度を気にかけることもなかった。

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