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Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


 不思議に思って晃の顔を見つめると、晃は微かに笑みを浮かべる。


「どっちも違う。集めてるわけじゃなくて、俺の親戚の叔父がこういう店経営してたんだよ」

「こういう店って……人形屋?」

「うん。和風の日本人形専門だったけどね。個人での経営だったから、結局あんまり売れなくて十年も経たないうちに店畳んじゃったらしい」


 晃は苦笑しながら、また人形へと視線を戻す。


「……小さい頃、一回だけその店に遊びに行ったことがあってさ。その時に――」


 そこで、言葉が途切れる。

 ちらりと横目で宵を覗き見て、晃はどこか愛おしげに瞳を細めた。

 甘ったるい微笑が口元をたたえ、そんな表情に宵の心臓がどくんと音を立てる。


「なんだよ……っ」

「べーつに」


 意味ありげな視線を送られたような気がしたのだが、晃は楽しげに笑っているだけ。

 ひとしきり笑い終わった後で、ぽつりと言った。


「まあ、このタイミングでこんな店を見つけたのも何かの縁かもしれないし」


 晃は観念したように瞼を閉じて、つぶやいた。


「――話してやるよ。俺の恋愛観と……君に一目惚れした理由」

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