月に囚われしもの【3ページ短編】
第1章 「彼女を追って」
「数ヶ月かけてお前の血は浄化され、ようやく今宵わたしのものになるのだ」
「お待ち申しておりました、伯爵様
もう準備はできております」
女はちらりとアランのほうを一瞥した
「ごめんなさい、アラン
わたしにはやるべきことがあるの」
伯爵と呼ばれた紳士はアランのほうを見てふっと見下したような笑みを浮かべ、彼の前で彼女の唇を奪った
そして彼女の寝間着のナイトドレスを肩からずらし、彼女を全裸にしていく
紳士もマントやスーツを脱ぎ捨て全裸になると、ふたりは身体を寄せ合い、長く執拗な前戯を繰り返し、ようやくひとつにつながった
何度も絶頂にふける女
紳士は終わりのない攻めを見せていたが、ようやく最期の瞬間、射精をする瞬間、同時に彼女の首筋に噛み付いた!
彼女は声にならない絶叫をした
その瞬間、彼女は隠し持っていた銀の剣を取り出し、紳士の背中へ突き刺した
そのまま自分の身体ごと深く剣を突き刺す
「どういうことだ!」
「わたしの家系は何百年も貴方を待っていた!
わたしはバンパイアハンター!
わたしの代でこの呪われた血を終わらせることが出来る、狩猟者の血を」
「わたしは銀の剣ごときで死にはしないぞ?」
「わかっているわ、でもこのまま動けずに朝陽にさらされて無事で居られるかしら?
朝には私の息は途絶えているでしょうけど、貴方は私から離れないのよ!
外をご覧なさい、なんて美しい満月
貴方の最期の夜にふさわしい
月に囚われし夜の住人よ、今夜で月の呪縛から解放してあげるわ!」
一陣の風がカーテンをはためかせ、外の満月が一望できた
いつの間にか雲は消え去っていた
すると動けなくなっていたアランの姿が徐々に変わっていく
毛が身体じゅうから噴き出し、背骨が折れ曲がり、手足が長く伸びていく
「俺に満月を、見せるなぁぁ!!」
アランは狼の姿へ変わってしまった
「アラン!貴方は狼男だったの!?」
理性を失った狼にはすでにアランとしての意識は無かった
ただ、目の前に横たわる動けぬ女の肉体を求めた
女は自ら刺し違えた状態で、生きたまま狼に食い散らかされてしまった
狼は人間の肉だけをたいらげ、魔族同士であるバンパイアの紳士には見向きもしなかった
が、剣を抜いてやる事もしなかった
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