
コーヒーブレイク
第2章 陰謀をめぐらせるとき
事故の翌日の放課後の生徒会室──
私と久美のほか、書記の一年生の子がいた。
「芝居なんかできるのか?」
久美は言う。
「うまくやるわよ」
昨日の事故の加害者は大野香織という一年生だった。
まもなく生徒会室に来ることになっているのは、清水鏡子。香織に自転車を貸したクラスメイトだ。
私は、彼女のまえでひと芝居うつのだ。
◆
鏡子は時間厳守だった。
ノックの音に、ひと呼吸おいて、
「入りなさい」と応じる。威厳という言葉を意識して。
鏡子が入ってくる。まあ美少女だ。
まっすぐ私を見る。
「1年2組、清水鏡子です。大野香織のクラスメイトです」
「清水さんね。今日は何の用?」
椅子に座ったまま応対する私。これも芝居の一環だ。
「香織……大野香織のことで、お願いにきました」
「大野、香織? 誰?」
早くもアドリブだ。久美がかすかに笑った。
「知らないんですか!? 昨日、自転車で女性に怪我をさせた……」
「あ、昨日の! はいはい、そうだったわねぇ」
「私は、香織に自転車を貸しました」
「そうなんだ。通学用自転車の貸し借りも校則違反なのよ」
「知らないうちに、香織の自転車は空気が抜けてたんです。塾は遠いから、しかたなく、私のを貸しました」
「しかたなくはないわ。バスもあるし、正門前のバイク屋で修理もできた。言い訳はやめなさい」
「言い訳……」
「そうよ。ちょっとイレギュラーなことがあると、すぐルールを破る。破っていいと思ってる。甘いのよ」
「でも……」
「昨日の事故は、ルールを守らなかった結果よ」
「規子」
打ち合わせ通り、ここで久美がたしなめる。
しかし、私は暴走するのだ。
「何よ? ルールを守れなかった者にふさわしい末路じゃない」
「いい加減にしろ」
確かにアドリブがきついかな。
私と久美のほか、書記の一年生の子がいた。
「芝居なんかできるのか?」
久美は言う。
「うまくやるわよ」
昨日の事故の加害者は大野香織という一年生だった。
まもなく生徒会室に来ることになっているのは、清水鏡子。香織に自転車を貸したクラスメイトだ。
私は、彼女のまえでひと芝居うつのだ。
◆
鏡子は時間厳守だった。
ノックの音に、ひと呼吸おいて、
「入りなさい」と応じる。威厳という言葉を意識して。
鏡子が入ってくる。まあ美少女だ。
まっすぐ私を見る。
「1年2組、清水鏡子です。大野香織のクラスメイトです」
「清水さんね。今日は何の用?」
椅子に座ったまま応対する私。これも芝居の一環だ。
「香織……大野香織のことで、お願いにきました」
「大野、香織? 誰?」
早くもアドリブだ。久美がかすかに笑った。
「知らないんですか!? 昨日、自転車で女性に怪我をさせた……」
「あ、昨日の! はいはい、そうだったわねぇ」
「私は、香織に自転車を貸しました」
「そうなんだ。通学用自転車の貸し借りも校則違反なのよ」
「知らないうちに、香織の自転車は空気が抜けてたんです。塾は遠いから、しかたなく、私のを貸しました」
「しかたなくはないわ。バスもあるし、正門前のバイク屋で修理もできた。言い訳はやめなさい」
「言い訳……」
「そうよ。ちょっとイレギュラーなことがあると、すぐルールを破る。破っていいと思ってる。甘いのよ」
「でも……」
「昨日の事故は、ルールを守らなかった結果よ」
「規子」
打ち合わせ通り、ここで久美がたしなめる。
しかし、私は暴走するのだ。
「何よ? ルールを守れなかった者にふさわしい末路じゃない」
「いい加減にしろ」
確かにアドリブがきついかな。
