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バニーガールホール

第9章  裏メニュー『ウサギのお店番』



『シェイクはし過ぎると香りが飛びますし、
ステアは…し過ぎると炭酸が飛ぶし
だからと言って足りないと分離する…。
シンプルなカクテルが故の難しさ……』

そう言いながら俺の前に
出来上がったジンフィズが出て来た。

『どうぞ…これが
…私のジンフィズです』

ユイが完成したジンフィズを
私のと言うのは…それだけ
このカクテルが…バーテンダーの
癖が…出やすい物だからなんだろう。

「……」

出されたジンフィズのグラスに口を付ける
砂糖が入ってるとは言ったが、甘味は
そんなに感じない爽やかなカクテルだ。


甘さもあるはずなのに…甘すぎない…、

これが…ユイの味…なんだろうな…。


俺がユイのジンフィズを
飲み終わっても加藤さんは
帰って来なかったので。
俺はユイに見送って貰って
ラビットホールを後にした。


ーーー
ーー



その翌日…出社すると…
ピカピカの顔をした…加藤さんが
凄い上機嫌で出迎えてくれて。

あの店を紹介した事を
凄い感謝されてしまったんだが…。

俺には…ウサギの巣穴で迷子になる
男が一人増えただけにしか感じない。

加藤さんが…今夜も
仕事帰りにラビットホールに
カノンに会いに行くと言っていて。

まぁ…加藤さんは俺より金あるし、
他に金を使う所もあんまり無さそうだから
カノンの太客になるだろうな…と
浮かれている加藤を見ながら
そんな事…を俺は考えていた。



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