
自殺紳士
第11章 Vol.11:いらない人
触れられない髪
求められない身体
聴かれない歌
知られない想い
今、ワタシがなくなっても
世界は何食わぬ顔で回り続けるとしたら
ワタシは、ワタシは
何処にいればいいのだろう?
それでも、誰かが必要としてくれたら
誰かがワタシと手を繋いでくれれば
生きていかれると思えるのに
ワタシの手は誰ともつながっていなかった
男性はワタシの言葉を聴いていた
ワタシは話し続けた
いつしか頬に涙が伝っていた
ワタシは嗚咽し
腐った内臓と
昏い心をえぐり出すように話した
あまりにも静かに男性は聴き続けた
ワタシはほんの出来心で
尋ねてしまった
「この世に、要らない人はいると思いますか?」
それは、ワタシの心の真ん中にある問だった
ずっとそればかり考えていた
そして、私は答えを知っていた
きっと、男性は答えに窮してしまうだろう
そう思った
ーいる と答えれば私を傷つける
ーいないと答えれば嘘つきだと言われる
ーどちらでもないと言えば逃げになる
だって、私は答えを知っているのだから
「そんなの・・・」
ワタシが話し始めて
男性は初めて口を開いた
「そんなの、いないに決まってるじゃないですか」
・・・
あまりにも当然のように言い切った男性に
ワタシは気勢をそがれてしまった
なんで少しも考えもしないの?
なんで、そんなに言い切れるの?
なんで、ワタシが必要だと言い切れるの?
何も知らないくせに!
ワタシは猛然と腹を立てた
言い返さなきゃ
と思って振り返って
男性の目を見て驚いた
男性は泣いていた
「当たり前じゃないですか
誰が要らない人だって言うんですか」
ワタシは男性が嘘をついていることがわかった
男性は、ワタシを傷つけまいとして
今、自分が持っている精一杯の言葉を使ったのだった
何にも工夫されていない言葉だった
あゝ そうか
この世に要らない人が居ないとか居るとか
ワタシの心にある問いは
そんなのではなかったのだ
誰かに「あなたが必要だ」って
ただそう言ってほしかった
ただ気持ちを込めて
居てほしいと叫んでほしかったんだ
ワタシはそっと目を閉じた
求められない身体
聴かれない歌
知られない想い
今、ワタシがなくなっても
世界は何食わぬ顔で回り続けるとしたら
ワタシは、ワタシは
何処にいればいいのだろう?
それでも、誰かが必要としてくれたら
誰かがワタシと手を繋いでくれれば
生きていかれると思えるのに
ワタシの手は誰ともつながっていなかった
男性はワタシの言葉を聴いていた
ワタシは話し続けた
いつしか頬に涙が伝っていた
ワタシは嗚咽し
腐った内臓と
昏い心をえぐり出すように話した
あまりにも静かに男性は聴き続けた
ワタシはほんの出来心で
尋ねてしまった
「この世に、要らない人はいると思いますか?」
それは、ワタシの心の真ん中にある問だった
ずっとそればかり考えていた
そして、私は答えを知っていた
きっと、男性は答えに窮してしまうだろう
そう思った
ーいる と答えれば私を傷つける
ーいないと答えれば嘘つきだと言われる
ーどちらでもないと言えば逃げになる
だって、私は答えを知っているのだから
「そんなの・・・」
ワタシが話し始めて
男性は初めて口を開いた
「そんなの、いないに決まってるじゃないですか」
・・・
あまりにも当然のように言い切った男性に
ワタシは気勢をそがれてしまった
なんで少しも考えもしないの?
なんで、そんなに言い切れるの?
なんで、ワタシが必要だと言い切れるの?
何も知らないくせに!
ワタシは猛然と腹を立てた
言い返さなきゃ
と思って振り返って
男性の目を見て驚いた
男性は泣いていた
「当たり前じゃないですか
誰が要らない人だって言うんですか」
ワタシは男性が嘘をついていることがわかった
男性は、ワタシを傷つけまいとして
今、自分が持っている精一杯の言葉を使ったのだった
何にも工夫されていない言葉だった
あゝ そうか
この世に要らない人が居ないとか居るとか
ワタシの心にある問いは
そんなのではなかったのだ
誰かに「あなたが必要だ」って
ただそう言ってほしかった
ただ気持ちを込めて
居てほしいと叫んでほしかったんだ
ワタシはそっと目を閉じた
