
素敵な飼い主様
第7章 戻れない
30代の彼だけど、全然若く見えて。
まだ若いのに、神矢の世話だなんて大変だな、とのん気に思った。
「どうしたのですか、この傷・・・」
そっとふれたのは、神矢の爪があたった頬。
あぁ、忘れてた。
忘れるくらい、あたしは泣いていたのか。
でも、今はそっとしてほしい。
こんな酷い顔、見せてられない。
「少し切れただけです。大丈夫ですから・・・」
「いえ、小さな傷でも、放っておけば酷い傷になることもあるのですよ?今、薬をだしますから」
あたしの施す声も無視して、薬を手に持っている鞄から取り出す川城さん。
何も聞かずに、優しく微笑む川城さんに、ドッと涙が溢れた。
まだ、こんなにも水分が残っていたのかってくらい、涙が止まらなかった。
