
はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第16章 『元カノからの依頼』
『だって…僕は…小町を
抱き締めてあげたりできないからね?』
小町はフェンスを握ったままで、
下に向けていた視線を上に向けた。
「もし……」
小町がその先の言葉を
紡ごうとしたのを、
仁が首を左右に振って否定する。
『それはその時…。
じゃあ、小町。僕は
心配性でやきもち焼きな
可愛い助手を病室で
待たせてるから戻るよ…。
でも…小町…、
そのもし…の時があったら。
……その時は…、さ。
貴虎じゃなくて僕にしといてね?』
じゃあ…と小さく右手を振って。
屋上に小町を残して
仁は屋上を後にした。
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「よぉ…仁、具合はどうだ?
橋本から聞いたぞ?仁、
お前、明日退院するんだろう?」
それから…小町は僕が退院する
前日に気まぐれの様にして
ふらふらっと…僕の病室に現れた。
『その顔は…僕に話したい事が
あって…来た…って顔なの?小町』
あの僕に相談を持ち掛けて来た時とは
明らかに小町の顔は違って居て。
すっきりとした
晴れやかな顔をしていたから。
