
はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第14章 『慰安旅行・翌日』
『すいません、内村さん。
僕が…退院したら、
いい店知ってるんで、
僕に、一杯奢らせて下さい』
ヒラヒラと内村が仁に手を振って、
そのまま仁の病室を後にする。
「ああ、せいぜいうんと美味くて
高い酒…頼んだぜ?仁」
その内村の背中に仁は、
真奈美に縋り付かれながら
頭を下げて見送った。
「じ…ッ、ぐす…ッ、ぅうう…ッ、
仁…さ…んっ、…でも…ッ、うッ…」
泣き過ぎて嗚咽混じりになりながら、
真奈美が言葉を紡ぐが。
何かを言うと余計に
真奈美が泣き出してしまうので。
『もう大丈夫だからさ。
真奈美ちゃん、大丈夫だよ…、僕は。
こう見えても…悪運が強いと言うか、
タフなんだよね。
それに…萌花にも…
まだこっちには来るのが早いって、
返品されちゃた…みたいだしね?』
「嫌ですぅ、仁さん…は、
死んじゃ…だめ…なんです…ッ。
仁さんに…しなれたら、
真奈美が困ります…ッ。
真奈美には…仁さんがしてるお仕事の
お手伝いは出来ても、
お仕事はできません…ッ…。
茂木探偵事務所が…無くなるのは…、
寂しいなって思ってましたけど。
…でもぉ…、夫婦円満本舗が…
無くなるのもダメですッ…」
