
はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第13章 『夫婦円満本舗の慰安旅行』
そう言って、逃げる様にして
そのまま部屋を飛び出して来てしまった。
あのまま…、
仁さんの顔を見てる事も出来なくて。
自分でも…どうしたらいいのか分からない。
でも…、自分の目からは…
次から次に涙が零れて来てて。
どっちみち…、
部屋には居られそうにないから。
その零れて来る涙を、
自分の手の甲で拭いながら。
エレベーターで
6階から1階へと降りて行って。
旅館の廊下を大浴場へ
向かって移動していると。
1階の大浴場の方へと向かう、
廊下の途中にある。
自動販売機が幾つかあるコーナーで。
浴衣姿の男性客の2人組に声を掛けられた。
『あれ?君、もしかして、泣いてる?』
『彼氏と旅行来てて、
彼氏とケンカしちゃったとかとか?
俺達もさ、付き合ってた
彼女と別れたばっかでさ。
こうして、男二人で、
傷心旅行してるんだけど』
かなりお酒を飲んでる感じで、
二人は酔っぱらってるみたいだった。
その手には今自動販売機で購入した
ロングの缶ビールが握られていて。
