マッチ売りの少女と死神さん
第10章 1月4日…死神さんに恋をしました
両手で数える程の年月が流れ、カリヌは困っていた。
通常、冥王とは七、八年もすれば自分が何者であるか自覚をし、死神として役割を果たし始めるのが常のはず。
冥界や天界の時の流れは地上よりも何十倍と遅いのだが、先代の頃からの厄災は地上で今も続いている。
……きっと人間界は迷子の魂だらけだろう。
ところがこの冥王は、いつまで経っても話さず、知性というものが垣間見えなかった。
今日も日がなオアシスで膝を抱え、ぬぼーっと景色を眺めているだけ。
業を煮やしたカリヌは冥王に言った。
「おいおい。 地上じゃさあ、半数の人が天然痘って病で倒れてるんだよお? 新しい命も小さすぎて、直ぐに亡くなっちまう。 それでも人間に道を示す気はまだ起こんないのかなあ」
死神は上半身ごと大きく体を横に捻った。
何を言ってるのか分からない、のポーズだ。
「くっ、何百回も説明したってのに。 このポンコツ!!」
カリヌは落胆を覚えた。
「そしたら僕もさあ、きっと神に役立たずと思われちゃうんだよね、んできっと、天に還されちゃう。 このまま志半ば」
カリヌが言い終わらないうちにピクッと冥王の頭が揺れ、立ち上がるとスタスタと仕事場に向かった。
「冥王?」
あまりにも彼の足が速すぎたので、カリヌは追いつけなかった。
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