
マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
急に次々と頭上から降ってきたこれは
「細氷………」
確か土地によるとダイヤモンドダスト、天使の囁きとも呼ばれるものだろう。
極寒の地域の、晴天かつ無風の朝に現れる自然現象と認識している。
「わあ…っ…!」
サラも同時に空を見上げていた。
大気を舞っては落ちる大小の光の粒。
言葉もないほど絢爛なその光景に、時おりホーリーは目を閉じて呼吸を思い出す必要があった。
「綺麗、ですね! ホーリーさん…!」
サラがその中を踊るように走り回っていた。
童女のごとく全身に歓びを溢れさせて。
ホーリーはまるでこの景色と一緒になって歓喜しているかのような、彼女の姿から目が離せなかった。
……それはまさに地上の美。
カサカサという乾いた雪晶の音、澄んで凍てつく匂い、この大気の感触。
ホーリーは五感を凌駕する、始めての体験に身動きも出来ずにいた。
(僕はこんな世界を彼女から奪うのか……?)
そんな問いと同時に。
(もしも叶うならば、僕の最期は)
それはホーリー自身から生まれた願いだった。
たとえこの世界がどんなに自分を嫌おうとも────────
そう思うのは……罪なのだろうか。
