
ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
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収容所が機能してすぐ、えれんはかつて良人と呼んだ男をそこに送った。書類の縁を切ったのは三年前、それから彼を罪に問うまで二年かかった。
久城とえれんは似ていた。結婚生活に明るい記憶のなかった二人は、今でも酒に酔えば元パートナーを罵倒して、彼らを投獄した際は、双方、勝利を喜び合った。
受け入れるまで時間が必要だったのは、えれんから距離を詰めていかねばならなかった久城より、愛津の方だ。彼女にもえれんに通じるところがあって、だが彼女の性質は、久城とは異なる。
そんな愛津も、えれんにとって不可欠になった。生活苦を体現していた彼女の身なりが、見られるものになったからではない。えれんが内心、同族嫌悪に近いものをいだいていたのにも関わらず、えれんを恩師のように慕って、選挙戦では身内同然に尽力してくれた彼女の野心は、革命という一種の炎を燃え立たせるために必要な熱を伴っていた。
彼女の私生活の惨状は、数日前の一件がなくても、えれんには想像に難くなかった。えれんにも、髪を整える余裕がなく、身につけるものは友人達の着古した、お下がりだった時分がある。
あの頃えれんは、男に媚びて、法外な額の車代を得られる夜会の常連だった。中古のドレスでめかしこんで、当時二十代だったえれんは同世代の女達の多くが口にする機会も得ないような酒を飲み、風格ある男達の手が腰や尻に触れようと、無知で無垢な笑顔を振る舞っていた。
