
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第6章 接触
空戦旗艦「グリメット城」の巨大な翼に朝陽が照らされれる
もともと空飛ぶ輸送船として建造されたガルダ型はずんぐりとした丸みを帯びた船体に大きな翼を広げて地球の空を制圧している
戦後に失われたガルダ型の後継機として作られた「フェニックス級」のうちの一機をグリメット家が買い付けて私設軍隊として規模を大きくしていった
いつの間にか眠ってしまったラーズ・ローズは目を開けると目の前のタイラ・シーサルの美しい瞳と目が合った
「お目覚め?ラーズ」
タイラはずっとラーズの寝顔を眺めていたようで、ラーズはバツが悪い顔をした
「ごめん、眠ってしまってた」
ラーズは目の前のタイラの黒い身体が白いシーツにくるまれているのが綺麗だな、と思った
「ゆうべはお疲れだったみたいね」
夜を共にしたタイラが意味ありげに笑った
黒い肌から真っ白な歯が輝いて見えた
「……いきなり初対面で、こんなことになっちまって……、俺はこんな男じゃなかったのに…」
ラーズは軽率な行動をとってしまった自分を恥じた
「私だって尻軽なオンナじゃないのよ、ゆうべはたまたまよ、アンタがジンバブエの話しを聞きたがるからつい油断しちゃった」
タイラも苦笑いするが、そのしなやかな肢体がとてもエキゾチックに思える
「俺はブルガリアの田舎から出てきた次男坊なんだ、成り上がる術も知らずに連邦軍に入隊して、ようやく新兵を卒業した程度の経験も少ない男なんだよ
それが初対面のアンタみたいにエキゾチックな女性とこうしてるのが信じられないよ」
ラーズは照れながらもタイラの縮れた髪を撫でた
タイラもラーズの身体に密着して優しいキスをする
「また元気になってきたようだね、もう1回スルかい?ラーズ」
そう言うとタイラはラーズの身体に覆いかぶさってくると、黒く光る美しい身体を見せつけてきた
そのとき、コンコンとドアがノックされて施錠もされていない扉がガチャっと開いた
「タイラ?起きてる?そっちにお客さん来てない?」
入ってきたのはスティーブの娘たちだった
「わっ!ちょっと待て!」
ギョッとしてラーズとタイラはふたりでシーツにくるまり、ベッドの上で後ずさりしたが逃げ場は無かった
それでも子供に裸を見せてはいけないという観念でシーツで隠すことぐらいしか出来なかった…
