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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第12章 メテオシュタイン


所員と関係することに対しては、研究所からストップはかからなかった


高ぶりが解消され、不安定だった能力が途端に改善されたからだ

たまにお小言を喰らうこともあったが、その奔放さは周囲に受け入れられていった



こうしてダイアナは〈成人で成功した希少な特例〉となる



一年戦争のあと、フラナガン機関は一時的に連邦軍に接収されたが、その後は地球のオーガスタや、ムラサメ、オークランドなどへ分割された



ダイアナは地球には降りず民間の研究所へまわったが、結局月面のアナハイム・エレクトロニクス社にたどりついたのだった



グリプス戦役など周囲の緊張感が高まったときに実戦参加した経験はあるものの、軍部には入らずテストパイロットとして試作機の研究部門で満足していた



だが


ネオ・ジオンの支援組織〈キサンドリア〉は理由をつけては彼女を実戦参加させようとしてきた


〈そろそろ潮時かな?〉


会社や軍職に良いように利用されつつある状況に喪失感が広がる



〈コロニー暮らしに戻る気も無いし、月はどこへ行っても此処より酷くなるだけだろう…

 ダイクンの息子は本気で地球を人の住めなくなる星にするみたいだな…

 でも過酷な環境で人々が地球から脱出するのなら…
 誰にも干渉されない暮らしが出来るなら

 地球へ逃げ込むのもアリかな…?〉



ダイアナは睡魔に襲われながら、ぼんやりと考えながら公共エレカバスからの車窓を眺めていた


ダイアナがアナハイム社にたどり着くとスタッフたちの怒号が聞こえてくる


怒鳴る人、走る人、集まっては散らばる


いつも静かな事務所が戦場のようだ


ダイアナは誰にも声をかけずうつむきながら格納庫のほうへ向かう


パイロットルームにはマルコ・ホイバウムが他のスタッフたちと談笑していた


マルコはダイアナに気づき声をかける


「…よォ、大丈夫か?アンタも眠れてないだろ」


「……彼女サンとのデートはつぶれたようね、怒ってなかった?」


「こんな仕事だ、怒られてもどうしようもねぇよ、それより追い出しちまって悪かったな」


「いいわよ、私も久しぶりに良かったから」


雑談を交わしながらパイロットスーツに袖を通していると、ズカズカとネクタイ姿の役職付きたちが部屋に入って来た


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