担当とハプバーで
第1章 止まらぬ欲求
眠い瞼を持ち上げながら、SNSの意味もない呟きを眺めているときだった。
葉野凛音のオススメ欄にショート動画が流れてきた。
スクロールしようとすると、手汗のせいか上手く動かず、自動再生される。
ホストの切り抜き動画だった。
「あ、ちょっと格好いい」
金髪ヴィジュアル系のホストの後に出てきたのは、長い黒髪をオールバックでポニーテールにした、悪そうな顔の男。
薄い色のサングラス、襟元だけ赤いラインの入った光沢のある黒シャツに、黒いジャケット。
首元には刺青がちらりと見えて、ホストと言うよりヤクザの側近。
でも、つい目が離せなくて動画再生ボタンを押していた。
五人ほどの紹介動画だが、やはりそのオールバックが目に焼き付いて、他のホストが記憶に残らない。
なにこれ。
こんな格好いいの。
存在するの、ヤクザ漫画以外に。
ペロリと舌を出してニヤリと笑う。
声は入っていないけれど、多分低音。
喉仏存在感強いな。
眉は書いてるだけっぽい。
身長は百八十越えてそう。
何より、スラリとした脚に、締まった腰のシルエットが色気に満ちている。
眠気を忘れてアイコンを押し、店の名前が目に飛び込んでくる。
ホストクラブー夜明けのジャックー
え、店名ダサくない。
ホストクラブってこう、横文字のゴージャスな名前が基本じゃないの。
場所は……新宿か。
ですよねー、と布団の中で寝返りを打つ。
千葉県民に新宿はちょっと遠いんだよなあ。
今年で齢三十二。
同棲の彼氏とは四年目にしてレス。
今も隣でいびきかいて寝てる。
ああ、ドキドキって消えるんだなあ。
付き合った当初は毎日のようにしてたのに。
今や月一あるかないか。
プロポーズすらしてこない男だもの。
子どもにも興味無いんだろうな。
互いの家族とも挨拶済み。
勢いさえあればとよく言うけれど、とうに勢いなんて消え失せてしまった。
動画リンクから、さらに他の動画を覗く。
目当てのホストが居ないのは飛ばし見。
次に見たのはあるある動画だった。
「同伴しつこい姫への対応」
呑気な声のナレーションの後に、オールバックの男がアップで出てくる。
隣に座ってるかのような、シチュエーション画角だ。
少しだけ、呼吸が荒くなる。
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