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願望アプリ

第1章 願望アプリ

***

『美晴……美晴、起きてる?』


 お風呂から部屋に戻ると、スマホのアプリから声がした。


「中島くんっ? 声がっ……!」

『良かった、もう寝たのかと思った。ごめんな、こんな夜遅くに』

「ううん、めっちゃ嬉しいよ!」


 夢みたい! まさかこうやって中島くんと直接話せるなんて……願望アプリは本当に願いを叶えてくれるんだ!


『実は美晴に頼みたいことがあってさ……』

「なに? なんでも言って」

『ゴホッ、ゴホッ』

「風邪? 大丈夫? そういえば今日学校休んでたよね」

『うん、ちょっと体調悪くてさ……休まなきゃいけないんだけど、今家じゃなくて』

「えっ、どこにいるの?」

『駅前のカラオケ店。ちょっと色々あって家に帰れないんだ』

「そうなんだ……心配だな」

『美晴、今から家出れる?』

「えっ?」

『俺、お金あんまなくてお腹空いててさ……何か持ってきてくれると嬉しい』

「!」


 中島くんがあたしに助けを求めてる!
 でも、待って。
 この『中島くん』は本物の中島くんじゃないから、行っても会えないんじゃ……。


『ゲホゲホゲホッ!』

「だ、大丈夫!?」

『……待ってるから。俺、美晴が来るまで待ってるから』


 真剣な表情でそう言われ、あたしの胸は高鳴った。


「わかった、すぐ行くから待ってて」


 あたしはすぐに準備をして、家を飛び出した。カラオケ店に行って、誰もいなければ帰ってこればいいと思った。なのに──。


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