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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 177 嫉妬

 やばい…

 心があの頃の…

 あの20年前の思いに還っていく様であった…



 ブー、ブー、ブー、ブー…

 その時であった、ノンの携帯電話が着信した。

「あ…」
 ノンは小さく呟き、携帯電話のディスプレイ表示を見る。

 おや…
 私はそんなノンの様子に少しの違和感を感じたのだ。

 このタイミングで掛かって欲しくない電話なんだ…

 何だ、何の?…

 あ、そうか…

 そうか…

「あ、ちょっとごめんね…」
 そしてノンはそう呟き、携帯電話を手にして個室から出て行った。

「だからぁ、今夜は出掛けるって言ったじゃん…」
 と、一瞬、少しだけそんな話し声が聞こえてきた。

 そうか、多分、今の男関係からの着信なんだろう…

 まだあの歳で、あの美しさで、あの艶気で、そして美容室のオーナーなのである…
 世間の男達が放っておく筈がないのだ。

 そうだよなぁ…
 そう思った時であった。

 ザワザワザワザワ…

 すると、急に心が騒めいてきたのである。

 え…

 おや…

 なんだ、この騒めきは…

 え、まさか…

 嫉妬なのか…

 いや、まさか、嫉妬なんて…

 だが、このザワザワとした騒めきには記憶があった。

 そうだ、あの時感じたあの思いだ…

 ついこの前、『新規事業計画』のメンバーがほぼ選定し終わり、本当の意味での準備室メンバーの6人で飲んだ時に、武石健太と蒼井美冴との絡みを見て感じた想い…
 そう、武石健太に対して抱き、感じたあの若さへの羨望という嫉妬。

 あの嫉妬心のザワザワとそっくりなのだ…

 ついこの前、『新規事業計画』のメンバーがほぼ選定し終わり、本当の意味での準備室メンバーの6人で飲んだ時に、武石健太と蒼井美冴との絡みを見て感じた想い…
 そう、武石健太に対して抱き、感じたあの若さへの羨望という嫉妬。

 あの嫉妬心のザワザワとそっくりなのだ…

 そしてこの時、あの魅力溢れる美冴を健太に取られてしまう…
 と、いう想いに駆られた騒めきと同じなのである。

 馬鹿な…

 あの時とはまるで状況や、設定が全く違うじゃないか…

 ましてやこのノンとは昨日、20年振りに、しかも突然、偶然に再会し、たまたまこうして飲んでいるだけなのに…

 嫉妬心なんておかしいじゃないか…

 



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