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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 82 心の迷宮

 これで本当に『黒い女』の卒業だ…

 決してゆうじを忘れることはないのであるが、わたし自身の中にある、ゆうじという存在感の想いのしがらみからの解放であり、卒業なのであり、今夜のこの行為により、それを自分の心ににいい聞かせ、明日からの新たな始まりに結び付けていこうと思うのである。

 明日からは本当の自分に戻り、そして新しい自分になって生きていくのだ…

 そしてこの自慰行為による絶頂感で、ようやく心の昂ぶりと騒めきも落ち着いてきて、眠気が訪れてきた。
 
 やはりこんな夜は自らを慰めるしか方法はないのか…
 だが、またこう不安定になる度に、こうして慰めて鎮める事が慣習になるのが恐いのだ。

 一人寝だから仕方がないが…
 できればこんな夜は誰かに抱かれて眠りたい。

『そんなときはとことんやるしかないんだよ…』
 突然、大原部長のあの夜の声が聞こえてきたのだ。

 だが彼女から、ゆかり課長から、部長を奪うわけにもいかないし、勿論、奪う気持ちもさらさらない。
 かといって新しい男は別に欲しくはないし、まだそんな想いが持てる程、心が追いついてはいないのである。

 今は、こんな夜だけ慰めてくれるだけでいいんだ…
 絶頂感の余韻の眠気の微睡みの中でそう想う。

 寂しいわけではない…
 むしろ明日からの新しい生き方にわくわくしているのだ。

 だが、こんな夜の為にも誰かが欲しい…
 部長は、大原部長はあの夜
『できるだけ…』
 助けてくれると言った、だが、そうそう甘える事が出来るはずがない。
 ゆかり課長の存在感を、さすがのわたしも無視は出来ない。

 その存在感を無視出来る程わたしはそんなに強くないし、まだ心のリハビリの途中なんだ…
 今度は心の迷宮に墜ちてしまいそうだ。
 だが、訪れてきた睡魔の力が強かった。

 わたしは眠りに墜ちていく…


 とにかくわたしは明日から、新しい始まりの一歩を踏み出していくんだ。

 明日からは心を強く持っていくんだ…

 
 


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