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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 125 還る心

 そう、まるで大人の男みたいにさ…

 優しくて…
 
 そんな気遣いが出来て…
 
 わたしは和哉のそんなところが……

 と、少し間を開けて和哉を見つめていく。

 そしてわたしはあの五年前の最後の夜に心が還っていったのである、そしてわたしと和哉の二人の間に流れている時間が一瞬、止まったのだ…
 
 あの頃のわたしは…

 和哉のそんなところが……
 
 本当に大好きであり、心が助けられ、そして惹かれ、魅かれたのだ…

 ドキドキ…

 胸が昂ぶってきた。

 本当にまるで、意識だけがあの五年前に還ったような想いに陥ってしまっていたのである…

 そこでわたしと和哉はお互いに黙って見つ合い、その彼の優しい目に一気に胸がドキドキと高鳴り、心が昂ぶってしまってきていた。

 ああ、あの頃の和哉の目だわ…

 あの五年前のあの頃の、いつもわたしを見てきていたあの憧憬の目だ…

 その時、和哉と二人の間に流れている時間が完全に止まった、いや、違う、五年前に心が還ったのである。

 だけどわたしは

 和哉のそんなところが…
 大好きだった…
 とは、はっきりと云えないでいたのだ。

 今更、大好きなんて…

 とても云えない…

 そして、もしそんな想いを云ってしまったのならば、また昨夜の様に悪戯に和哉の心を煽り、揺さぶってしまうのではないかのか…
 と、思えてしまい、余計にはっきりと云えなかったのである。


「ふうぅ…」
 
 どうしよう…
 
 するとわたしは思わずそう吐息を漏らし、視線を海水浴場へと動かすと、水平線の向こうに大きなフェリーが見えていた。

 ああ、どうしよう…

 二人して見つめ合ったのはほんの一瞬だったのだが、わたしにはすごく長く感じていた…

 胸の昂ぶりが治まる気配がない…

 この胸の昂ぶりはどうしたら鎮まるのか…

 本当に、わたしの意識の想いは、あの五年前の最後の夜の時間に戻った、いや、還っていたのである。




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