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　96　切望の想い

「だけど…最近、わたしは変わったらしく…
　普通の女になろうと…
　可愛い女になろうと…
　急にそう想うようになって…
　そのせいなのかもしれない…
　そのせいで友達が欲しいと、急に想ったのかもしれなくて…」

　わたしはここまで一気に、隣に座っている美冴さんの手を握りながら、まるで告白をするかのように話しをしたのだ。
　そして彼女は、わたしが突然、こんな話しをしてきたので少し戸惑っているようであった。

　美冴さんは彼女なりに、さっきのワインバーで突然豹変し、淫靡な艶気を放ちながら、あんな淫らな姿を曝した事をさっきから謝ろうとしている事はわたしにはわかってはいたのだ。
　だが、さっきのあのワインバーでのその事は、わたしには一つも不快ではなかったのである。
　逆に、実にわたしの事をよく見てくれていて、そして内面的な想いまでを理解してくれている事がよく分かって、すごく嬉しく、いや、感動すらしていたのだ。
　そしてわたしも間違いなく、さっきのあの美冴さんを見て憧れ、欲情をしたことをトイレで確認し、自覚していたのである。

　それに、あの突然の豹変ぶりにも何かの理由があるに決まっている、じゃなければ逆に不自然なのだ。
　だが、わたしはその豹変ぶりの理由は友達になってから彼女に訊きたいのである。

　だから、そんな美冴さんだからこそ…

　いや、蒼井美冴、そして『黒い女』の今までの想いを話してくれたからこそ、わたしはやはり
　蒼井美冴さんと友達になりたい…
　なれる…
　彼女しかいない…
　と、切望の想いが昂ぶったのだ。

　だから美冴さんには謝って欲しくはなかったのである。
　その為に先に店を出て、彼女に謝る隙を与えないように先を歩いたのだ。
　そして歩きながら、この友達の切望の想いを話すタイミングを計っていたのである。

　だが、基本、今までのわたしにはこんな想いの告白や、願い等をしたことが本当に無かった、無いのであった。
　だから、どう切り出したらよいのか、話し始めたらよいのか、全くわからなかったのである。

　改めて、自分はいかに普通ではない、欠陥の女なんだ…
　と、つくづく思い知ったのだ。