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シャイニーストッキング

第18章 ほつれるストッキング2          蒼井美冴と松下律子

 31 松下律子(16)

「はい、お待ちどうっス」
 マスターは二つのカクテルをテーブルに置き、奥へと行った。

「ふぅぅ…」
 そして二人で、そのカクテルを一口飲み…
 わたしは、美冴さんを見つめ直す。

「さて?」
 すると美冴さんはやはり、わたしの思いを見透かしているみたいに、問うてきた。

「あ、は、はい…」
 わたしはさっきのマスターと美冴さんからの話しを聞いてしまい、なんとなく自分の想いが小さく、不純に感じてしまって…
 言い淀んでしまう。

「さぁ、なにかなぁ?
 話すとねぇ、スッキリするわよぉ…」

「え…」
 美冴さんは膝に置いた手を再び動かし、わたしの手に軽く触れ…
 優しい目で見つめ、そう囁いてきた。

「さぁ、シャネルの秘密を…教えて……」

「あ、は、はい…」

 そうシャネルの秘密…
 それは、わたしのオンナのサガそのもの。
 そして、今のわたしの、全ての秘密に通ずる話しーー

 シャネルのカラクリを話すには、全部を暴露しなくてはならない…
 でも、この美冴さんにならば、かまわない、ううん…
 話したいーー

「……あ、は、はい、あ、あのぉ………」

 わたしは、話しを始めるーー

ーーわたしは、実は、ニューヨーク帰りの秘書なんかじゃなくてぇ…
 元々は、銀座のクラブのホステスだったんですーー

「えっ、ぎ、銀座のクラブぅ?」
 さすがの美冴さんも驚きの声を漏らす。

「はい、シャネルの秘密は、その時代から話さないと……」

「……」
 そしてわたしは、話しを続けていくーー

 そのクラブホステス時代に、山崎専務に連れられて来た大原部長に一目惚れした経緯…
「あの甘い香りに魅せられて…
 気付いたら、惚れ込んでしまっていたの…」

「……」
 
 でもその時点で、既に佐々木ゆかりの存在は知っていたし…

「……」

 初めはね、その佐々木ゆかりに対するアピールだけのつもりのシャネルNo.18の残り香のつもりだったんだけど…

「……」

 あの人との逢瀬を重ねる毎に、わたしの想いが日々高まって、それに、あの人からの愛情も確信してしまって…

「……」
 美冴さんは黙って、わたしの目を逸れずに見つめ、聞いてくれていた。

 そうあれは、七月頭の頃だったかなぁ?
 山崎のおじさま、あ、専務が、あの人の常務昇進の話しをしてきたのーー

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