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シャイニーストッキング

第17章 ほつれるストッキング 1         佐々木ゆかり

 41 越前屋の登場

 そして…
「彼は……にさぁ……ズだか……ねぇ……」
 途切れ途切れに聞こえてくる美冴の声…
 それは、どう考えても悪口に違いなく、はっきり聞こえないもどかしさに、騒めいてしまう。

 だけど、間に割り込む勇気などはなく…
 ましてやゆかりの方にも、顔さえ向けられない。

 我ながら本当に、情けない――

 だが、救世主が、現れた…

「さあぁ、お姉さぁん……
 あ、松下さぁん、どうぞぉぉ……」

 突然、途方に暮れていると、あの、いつものにこやかで、可愛らしく、明るい、笑顔と声の…
 越前屋という存在が現れたのである。

「あぁ、蒼井さんもぉ……」

 そんな彼女の登場により…
 ここにいる、私を含めた四人の張り詰めた空気が、一気に緩んだのが分かった。

「さぁ、まずは、松下さぁんどうぞぉぉ」
 ビール瓶を片手に、松下秘書へと傾けていく。

「……」
 美冴の肩が、緩んだのが、後ろから伝わってきた。

「ふぅぅ…」

 すると…
 傍らのゆかりからも、そんな吐息が漏れ聞こえ…

 いいも悪いも、やっぱり私たちは、この越前屋の登場に、救われたみたい――

 すると、美冴が…
「ほらぁ、越前屋さん違うでしょう…」

「え…」

「まずは、大原常務さんからおつぎしないとぉ…」
 さっきとは、打って変わって…
 明るい声音で、そう言った。

「え、あっ、は、はい…」
 すると、越前屋は急に、緊張した面持ちで、私を見る。

「まずは、大原常務からでしょう…」
 
「あ、は、はい…」

 なんとなく、その美冴の言い方に、引っ掛かるモノを感じたのだが… 
 とにもかくにも…
 この越前屋の登場に、私の心は、スッと軽くなったのだ。

 いや…
 律子、美冴、そしてゆかりも、明らかに雰囲気が軽くなった感じがしてきのである。

「は、はい、あ、お、大原常務、と、どうぞぉ…」
 少し、緊張気味に、ビールを傾けてきた。

「あ、うん、ありがとう…」
 私は、グラスを差し出す。
 
 本当に、この越前屋の明るさと、可愛らしさに救われた…
 そして…
「じゃぁ、今度は、私からな…」

「あ…は、はい……」

 とりあえず、この場の空気感は緩んだのだが…
 だが、まだなにも、変わってはいない――

 

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