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　125　誘い(1)

　わたし、佐々木ゆかり…
　彼、大原浩一常務…
　松下律子秘書…
　蒼井美冴…
　そしてこの四人の心の共通の緩衝材として存在する越前屋朋美。

　そんな彼女の存在感が…
　かろうじてこの対峙の場の空気感を和ませ、ギリギリの緊張感の均衡を保たせてくれているようであった。

　そして正にそんな存在の彼女が、このギリギリの対峙の場に終止符を打ってくれる…

「あぁそ、そうだ、そうですぅ」
　突然、越前屋さんが、大原常務に対して…
「え、ええとぉ、実はぁ、明日の就業後にぃ、この『新プロジェクト企画部署』のメンバー全員でぇ…
　決起、結成集会の飲み会をやるんですぅ…」
　と、この場の緊張感等々なんて全く気付かない、彼女特有の明るい口調でそう言ってきた…
　そしてその瞬間、この対峙の場の張り詰めていた空気感が一気に緩んだ気がしたのだ。

「ほぉ…」
　すると彼も、この越前屋さんの明るさに釣られて軽く頷く。

「それでぇ、その結成集会にぃ、ぜひ、いや、何がなんでも大原常務にも参加してもらいたいんですぅ」
　そして彼女はそう続けて言ってきた。

「え、あ、私もか？」
　完全に彼は、越前屋さんに不意突かれたみたいな声を漏らす…

「はぁい、もちろんですぅ、大原常務はこの『新プロジェクト企画』の最高責任者でありぃ、そしてぇ『コールセンター部』の営業課の皆さんもぉ参加するんでぇ、ほらぁ、コールセンター部にとってはぁ、常務さんは『本社本部長』なわけだしぃ…」
　
「あ、う、うむ…」
　さすが越前屋さんだ…
　そのまま彼女は続けて、彼に二の句を云わせぬ勢いでそうたたみ掛けていく。

　それにまた、越前屋さんの言わんとするその言葉は至極最もでもあり、もちろん異論はない…
　いや、彼、大原常務を明日の集会という飲み会に誘うということ自体、わたしはあまりにも色々と忙しくてすっかり忘れ、いいや、失念していたのである。

　ううん、それよりもまず…