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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 93 秘書 松下律子(21)

「ええ、ウソ、ウソですよ、松下さんに彼氏がいないなんてあり得ないしぃ」
 そしてまた彼、青山一也は、そんなわたしの一瞬の心の動揺の隙を突いて攻めてきた。

「え、あ、ほ、本当に、ホントですよ、彼氏なんていないし……」
 
 確かに彼、大原浩一常務は、現時点では正式な彼氏ではない…
 の、だが、一瞬わたしはその常務の事を、大好きで愛して止まない彼の事を、思い、想い浮かべてしまったという事実を見抜かれてしまったということに動揺をして、いや、僅かではあるが露わにしてしまったようであるのだ。

 そして青山一也が一瞬にしてその動揺の隙間を突いて攻めてきた…

「ええ、ホントかなぁ?
 本当に彼氏いないんですかぁ?
 なんかあり得ないなぁ…」

「ほ、本当ですから…
 第一、仕事が不規則だし、忙しいんでそんな暇が無いんです、それに出会いもないし…」
 わたしは咄嗟に、この流れを誤魔化す為にそう必死に言葉を並べていく。

「ふうん、そうなんかなぁ…
 まるでその松下さんの言葉はさぁ、いい女の言い訳の常套句にしか聞こえないんだよなぁ…」

「え、そ、そんな事は……」
 そのものズバリを言い突かれてしまい、言葉が続かない。

「ま、だいたい隙のないいい女はみんな、そう言うんだよなぁ…」

「え、ほ、ホントですから…」

「ホントかなぁ…ま、でも、今となってはそんな事はどっちでもかまわないんですけどねぇ」
 と、笑みを浮かべながら言ってくる。

「え、どっちでもって?」

「あ、うん、ほら、だってもう松下さんには自分が適当に遊んでるのバレてるしさ…
 それに…」

 え、それにってなんだ?…

「え?」

「それに遊んでいる男は嫌いじゃないでしょう?」

「え、あ……」
 彼、青山一也は…
 まるでわたしの事を、既に見抜いているかの様な口ぶりでそういってきた。

「さっきから松下さんは自分にそう言っている様な感じや雰囲気を醸し出してきていますよ…」

「あ、え…」

 確かにそうかもしれない…

「だから自分自身もぉ、気楽に自分というモノを出せてる感じだしぃ…」

 あぁ…
 わたしは自分で彼を誘っているみたいであったのか?

 わたしは一気に動揺してしまい、そして無意識に腕時計を見てしまう…
 


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