テキストサイズ

シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 71 敦子の想い(8)

 あれから僅か三ヶ月後にゆかりお姫さまは、突然『クラブCANDY』から消えてしまったのだ…
 そしてそれから、わたしの迷走が始まったのである。

 その時期は8月、ちょうど夏休みであったからわたしは毎日の様に
『クラブCANDY』に夜毎通っていた…
 また、ゆかりお姫さまも毎晩ではないけれども、週に4、5日は通っていた。

 しかしわたし達の距離感は微妙に近付かなかったのだが、当時のわたしにはそれで十分、いや、姿を見れたり、存在感を感じられるだけで良かったのである。

 だけど、わたしはゆかりお姫さまへの想いという恋慕を意識、ううん、自覚したせいなのか…
 どうやら無意識にビアンという性的嗜好のオーラみたいなモノを発する様になったらしく、なぜかソッチ系の女性、いや、歳上のお姉さま方が近寄ってくる様になっていたのであった。

 だが、その当時のわたしにはゆかりお姫さまの姿しか目には入らず、それらの誘いには全く心は揺らがなく…
 夜毎、心の中でゆかりお姫さまを゙求め、切望をし、一人慰みで十分であったのだ。

 いや、あの頃のわたしには、この感情、心の揺らぎをビアンという性的嗜好に結び付けられず、あくまでもゆかりお姫さまだけを見つめ、求めていたのだと思う…

 しかし、8月のお盆過ぎくらいであった…
 突然、ゆかりお姫さまが消えたのだ。

 いや、正確には『クラブCANDY』に通わなくなったという事なのであった…
 だけど、当時のわたしには、そしてまだ、高校一年生の16歳のガキのわたしには分かりようもなかったのである。
 
 ゆかりお姫さまの姿が消えて、一週間が過ぎ、二週間が過ぎた時に初めてその重大さが分かり…
 ハッと気付くといつの間にか、そんなゆかりお姫さまの取り巻きの男達の殆どの姿も消えていたのに気付いたくらいであったのだ。

 そして夏休みが終わろうという夜…

『ゆかり姫はどうやら六本木のディスコに鞍替えしたみたいだよ…』

『ええ、どこのディスコだったかなぁ?』

『六本木も沢山ディスコあるからなぁ』

 その当時のわたしの情報収集力はそんな程度しか無く、さっぱり情報が掴めない。

 わたしの心を魅了して止まない、憧れのゆかりお姫さまが消えてしまったのだから…
 落胆し、心にポッカリと穴が開いてしまったみたいであった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ