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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 68 敦子の想い(5)

『ほら、待てよっ』

『えっ、イヤっ、か、帰るのっ』
 わたしはなんとかその男達の腕を振り切り、トイレへ通ずる通路に小走りに逃げていくと…

『あららぁ、どうしたのぉ』
  
『あっ…』

 なんと…
『あれぇ、何キミ達はぁ?
 ここは女子トイレだけどぉ』

『あ、ひ、姫っ』

『い、いや、違うんです』

 するとわたしを追ってきた男達が慌てて…
 偶然のタイミングでトイレから出てきたゆかり姫に言い訳をしてきたのだ。

 そう、このディスコに出入りしている人ならば誰でも、いや、知らない人はいないくらいの、ううん、このディスコの中では女王様然の存在感がこのゆかりお姫さまにはあったのだ…

 そしてわたしはその勢いで、彼女の傍らに立ち…
 助けを求める目で見つめる。

『ふぅん、そういうことかぁ…』
 するとゆかりお姫さまはそんなわたしの目の意味を察知をし、そう呟いた。

『あ、いや…』
 そして男達もそんなわたしとゆかりお姫さまの雰囲気を察知し、慌ててくる。

『ふぅん、あんた達さぁ…』
 するとゆかりお姫さまはわたしの肩に手を触れながら、男達に正対し…

『キミ達はさぁ…
 また明日からもさぁ、ここで遊びたいんでしょう?』
 そう言った、いや、言ってくれたのだ。

『あ、う、は、はい…』 

『だったらさぁ、分かるわよね』
 そして、ゆかりお姫さまのその言葉には有無を云わさぬ迫力と、このディスコでの女王様然とした毅然の強さがあった。

『は、はい…』
 そして男達にもゆかりお姫さまの、いや、ゆかり女王様としての強さが良く分かっていて、ううん、伝わったらしく…

『わ、分かってますから…』
 そう呟き、そして廻れ右をして去っていったのだ。

『うん、じゃあねぇ、また、明日ねぇ』
 するとゆかりお姫さまは、その男達にそう声を掛け、わたしの顔を見る。

『あらぁ、まだ高校生かなぁ?』

『あ…は、はい…』

『ふぅん、ダメよぉ、高校生だってさぁ、男をちゃんと見ないとさ…』

『は、はい…』
 わたしはそのゆかりお姫さまの言葉に心を揺らしてしまう。

『あら、アナタ可愛い顔してるのねぇ』
 すると、わたしの顔をジッと見つめてそう囁き…

『あ、えっ』

 なんと、わたしの肩をスッと抱き寄せ、そして…
『うぅ…』
 キスをしてきたのである。



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