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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 30 秘書の秘密(2)

「…で?」

「あ、はい…
 面白い…かなぁ、そんな情報が訊けましたよ」
 鈴木くんの同期に本社秘書課勤務がいるのだ、そしてわたしは適当な嘘を繕って彼、大原常務の専属秘書として新しく就任した『松下律子』の情報入手を依頼していたのである。


「え、面白い情報って?」

「あ、はい、実は…」

 実は、なぜか、あの常務専属秘書に就任した『松下律子』さんという存在自体が…

「謎らしいんです…」

「えっ、な、謎って?」

「あ、はい…」
 
 わたしと鈴木くんの二人しかこの部長室にはおらず、また、誰にも聞こえる筈もないのだが…
 なぜかわたし達はヒソヒソと声を潜めて話をしていく。

「はい、つまり…」

 どうやらその『松下律子』さんという存在が突然現れた…
 と、言うのである。

「え、突然現れたって?」

「あ、はい…一応○○年入社の…
 しかもニューヨーク支社採用という経歴になってるようで…」

「え、に、ニューヨーク支社採用って…」

「あ、はい、それがぁ…
 そこら辺はハッキリしていないそうなんですが…
 突然、え…と、お盆休み前の8月8日付けで辞令が…
 
 それも、山崎専務から秘書課課長への直接の辞令だそうで…」

「えっ、や、山崎専務直接って?…」

「はい…秘書課課長へ直接らしいんです…」

 山崎専務が…

 わたしは一気にザワザワと心が騒めき始めてきた…

 確かに彼、大原常務やわたしにとって、山崎専務は出世への後ろ盾であり、恩人的存在ではあるのだが、どうしてもわたしの心の中での存在感は…
 今朝も彼と話しをした時に『悪巧み』という単語が出る様な『悪』という印象があるのだ。

 いや、決して山崎専務は悪い事はしてはいない…
 むしろ会社にとって、いや、本社にとって、いいや、彼とわたしにとってはプラスな存在でしかないのである。

 それは大原常務就任然り…

 わたしの企画を採用してくれて
『本社コールセンター部部長』
『新規プロジェクト準備室室長』
 等々の、同期ブッチギリの昇進は全て山崎専務のお陰であるから、決して『悪』では無いのだ。

 ただ、なんとなく『善』と『悪』どちらか…
 それがなんとなく『悪』であり、そして『悪巧み』というイメージに繋がっているだけなのである。




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