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　149　母親の言葉

「ふーん、また夕方には出掛けるんだぁ…」
　例のファミレスで少し早めのお昼を済ませて帰宅するなり、また姉が再びそんな嫌味を言ってきた。

　なぜか、今日の姉の嫌味攻撃はいつもよりしつこい気がする…

　そしてわたしはそんな嫌味攻撃から逃げる為にも…
「あー、汗掻いちゃったからシャワー浴びよう…」
　そう言ってシャワールームへ逃げていく。

「いいじゃない、美冴の好きにさせてあげればさ…」
　そしてわたしがシャワールームに入る直前に、母親のそんな声が聞こえてきた。

　そうか…
　お母さんはそうなのか…

　それは、二年半振りに普通に戻ったわたしを好きにさせてあげよう…
　と、いう優しい母親の想いの言葉であった。

　その言葉には優しく、慈しみの思いが籠もっているのだ…
　そして娘が…
　わたしが…
　復活の戸惑いから藻掻いているのも分かっている様でもある。

　本当にお母さんには感謝しかないわ…

　そしてぬるめのシャワーを浴びる。
　それがひとまず、わたしの心を落ち着かせてくれるのだ。

　だが…

　姉にどう嫌味を言われようが、夕方には、また、再びゆかりさんに逢いに行くのだ…
　いや、逢わずにはいられない…

　そして、夕方まで待てそうにもない…

　しかし、まだ、午後１時半過ぎであった。


「ふうぅ、あれ、お姉ちゃんは？」

「今度は旦那さんの実家に行くって慌てて帰ったわよ」
　シャワーから上がると姉はいなかった。
　
「そうなんだぁ」

「まぁ、お姉ちゃんは色々ああ言うけどさ、美冴は、今は、好きにしてかまわないからね…」
　すると、母はそう言ってくれたのである。

「え…」

「色々と戻してさぁ、リセットしないとね」
　と、まるで、最近のわたしの苦悩と戸惑いと不惑な想いを理解しているかの様な言葉を言ってくれたのである、いや、きっと、母は、母親は、何でもお見通しなんだ…
　この時、わたしはそう思ったのだ。

　そして…
　突然、わたしの心が急にザワザワと騒ついてきたのである。

　ああ…

　ゆかりさんに逢いたい…

　すぐにでも逢いたい…

　夕方からなんて…

　とても待てないわ…


　よし…

　わたしはゆかりさんに電話を掛ける。