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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 136 始まりの朝…

 夢の様な出来事であったからこそ…

 一夜の夢で終わってしまうのではないか…

 心が寂しく、そして、そう騒ついてくる。

「あ、あのぉ…」
 すると着替え終わったみさえさんがベッドルームに戻ってきた。

 そして…

「また…
 また、今夜…」

 え…

「また今夜…来てもいい?…」
 と、視線を逸らし、恥ずかしそうに言ってきたのである。

 え…

 その言葉に、一気にわたしの心は震えてしまう。

 また、今夜…

 来てくれるのか…

「お墓参り終わって、一段落したら…
 また来てもいいかしら…」
 と、みさえさんは夢の様な言葉を言ってきてくれたのだ。


「え、ええ…も、もちろん…」

 心が震え、いや、感動さえしてしまい…
 涙が滲み出てくるのを感じていた。

「うん、じゃ、じゃあ、夕方、電話しますね…」
 するとみさえさんはそう言って、スッとベッドにうずくまっているわたしに近寄り…

「あ……」

 軽く唇を寄せて…

 キスをしてきたのである…

 そしてスッと離れ…

「じゃあ、夕方また…」
 そう言って、部屋を出ていったのだ。

 バタン…

 ドアの閉まる音が聞こえてきた。

 だが…

 そのドアの閉まる音は…

 決して寂しい響きの類いの音には聞こえなかった…

 なんとなく…

 明るく、軽い響きの音に聞こえたのだ。


『じゃ、また夕方…』
 そして、そのみさえさんの言葉が、言霊の如くに、何度も何度も脳裏を巡ってくる。

 また来てくれる…

 また逢いに来てくれる…

 一夜の夢では無かったんだ…

 一抹の寂しさ等はどこかに消え去り、また、夕方に掛けてのワクワク感が一気に昂ぶってきた。

 ああ、夕方まで、待ち遠しい…

 やはり、始まりなんだ…

 一夜の夢の終わりではなく…

 長い…

 永い…

 愛と…

 そして友情の…

 これからの二人の始まりになるんだ…

 まだ、一日目…

 一夜目…

 そして…

 終わりではなく始まりの朝に…





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