テキストサイズ

シャイニーストッキング

第3章 絡まるストッキング2 美冴

 28 デジャヴ

 この突然の欲情の裏には何かがあるのかもしれない…
 だが、長年の憧れである佐々木ゆかり先輩部長にひけをとらない、いや、勝るとも劣らない、この美しく、魅力溢れる美冴さんの欲情を目の当たりにして、そんな微かな違和感など瞬く間に消えてしまった。

「み、店を出ましょう…」

 汐留はある意味ビジネス街である。
 このショッピングモールビルを出ると、周りにはホテルが沢山目に入る。
 俺は美冴さんの手を掴み、斜め前に立地する『ロイヤルパークホテル汐留』に早足で入った。
 少しの間が、少しの時間が、美冴さんの気の変わりに繫がる事の恐れがあって嫌であったのだ。
 それは衝動的な欲情は突然、醒める可能性もあるからである。
 そして急ぎチェックインを済ませ、エレベーターに乗る。
 幸いエレベーター内は二人であった。

 すかさず俺は美冴さんの肩を抱き寄せてキスをする。

「あっ…ん…」
 なんと美冴さんの舌先が侵入ってきたのだ。

 その舌先は、キスは、唾液は、まるで蜜のように甘かった…

 25階のフロアに到着し、エレベーターを降りても唇を離さないでいた。
 いや、離せなくなっていたのだ。
 それほどに甘く、痺れるようなキスなのである。

「あっ、んん…」
「うっ、むむ…」
 互いに舌を貪り合い、熱い、甘い、情熱の唾液を交わし合う。

 ガチャ…
 近くの部屋のドアの開く音で俺達はようやく離れられたのだ。

 2511号室…
 美冴さんの手を取り、部屋へと向かう。

 バタン…

 部屋に入ると目の前の窓に、ライトアップされた赤い東京タワーが見映っていた。
 そして美冴さんはその東京タワーを背にしてベッドに座わったのだ。


「さあ、健太、脱がせて…」
 ベッドに座り、右脚をスッと伸ばし、俺に対して黒いヒールを差し出してくる。

「あ、は、はい…」
 
 こ、これは…

 まるでデジャヴだ…
 あの時のデジャヴなのだ。

 俺の初めての夜
 初めてゆかり先輩と過ごした忘れられない夜…
 あの夜、ゆかり先輩は赤いヒールを俺に差し出してきた。
 そして、今夜、美冴さんは黒いヒールを差し出してきたのである。

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…
 あの夜と同じように胸が昂ぶってきた。


「さぁ、脱がせて…」

 そして妖しく、淫靡な目でそう言ってくる…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ