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シャイニーストッキング

第3章 絡まるストッキング2 美冴

 21 健太の作戦

「今から汐留へ向かいますから…」
 そう健太くんは言って、汐留に新しく出来た47階の高層ショッピングモールビル内のイタリアンレストランバーを指定してきたのだ。
 
「俺の名前で予約してありますから…」
 この保険会社からはそのショッピングモールビルまでは徒歩3分なのだ。
 だからわたしはショッピングモール内を散策しながら時間を潰していく。
 わたしにはこんなショッピングモール散策自体も約2年振りなのであった、だから違う意味でワクワク感を感じていたのである。
 自律神経等ではなく、違った意味でワクワクと昂ぶっていた。
 そしてしばらく散策していると、健太くんから到着の連絡が来て、わたしは待ち合わせのイタリアンレストランバーに向かう。

「よかった…」
 一瞬、バックレられてしまったかなと思った…と彼は言ってきた。

「さすがに…」
 よほど信用がないのか、さすがにそんな事はしないわ…
 そうわたしは応える。

「だってぇ、昨夜は電話出てくれなかったから…」
 電話番号を渡してきたくせに…
 その言い方に母性がくすぐられるのだ。

 あ、これが、彼、健太くんの手、作戦なのね…
 その時に気付いたのだ、彼は年上の女の扱い方がかなり上手そうなのである。

 そしてわたしはそんな彼の巧みな話術と、爽やかな笑顔にすっかり心を掴まれてしまう。
 わたしは彼とは9歳も年上のおばさんなのだ、だが、そんな歳の差等感じさせず、つい彼の手の平で持ち上げられ、踊らされ、引っ掛かってしまっていたのだ。
 思わぬ楽しい食事になっていた。

「あ、そうそう、わたし、ゆかり部長の学生時代の話しが聞きたいわ…」
 2杯目のイタリアワインを飲み終わった辺りでそう訊いた。

「ええ、いいですけどぉ、あまり話しちゃうと怒られちゃうからなぁ…」
 そう言いながらもにこやかな笑みは絶やさない。
 彼は終始爽やかな笑顔を浮かべているのだ、これがまたわたしの気持ちを緩やかにしてくるのである。
 越前屋朋美さんもそうなのであるが、彼の笑顔も心を癒してくる。

「俺とゆかり先輩は…」 
 口調が先輩、後輩になっていた。

「…そうなんですよ、あの当時はバブル全盛期だったから…」
 ゆかり部長はあの美貌なので常に周りには男達を従えていて、女王様でしたよ
 俺もそんな男達の中の一人でした…



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