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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 13 向日葵の天使

『ゆかりさん、少し早く着いちゃいましたぁ…
 今、マンションのエントランスにいますぅ』
 その着信はやはりいつもとは違う、ややテンション高めの美冴さんからであった。

「あ、う、うん…
 じゃあ、今直ぐに下りていきますね」
 わたしは慌ててそう言って電話を切った。

 もう、いいや…

 わたしは取り急ぎ、いつもの部屋着である着古したTシャツとハーフパンツ姿のままで、美冴さんを迎えにエレベーターに乗る。

 ドキドキしていた…

 美冴さんが、友達が、ウチに来る、いや、来た…

 チン…
 エレベーターのドアが開く。

「あっ」

 ドキドキ…

 目の前になんと、黄色い天使が微笑みながら立っていた…

「ゆかりさんこんにちは…
 うふふ…来ちゃいましたぁ…」
 
 そう微笑みながら言ってきた美冴さんの姿は…
 白いノースリーブのTシャツに、薄い黄色系の短いコットンの開衿型のシャツを羽織り、そしてやはり薄い黄色の膝丈のキュロットスカートを穿き、白い網目のミュールサンダルを履いていたのだ。

 その姿は正に真夏のリゾートファッションであり、そう、その姿は…

 黄色い天使…

 いや、黄色い向日葵の天使の様であった…
 いや、わたしにはそう見えたのである。

 ドキドキドキドキ…
 昂ぶりが更に激しく高鳴ってくる。

 え、本当に美冴さんなの…
 その姿があまりにも眩しくて、戸惑いの想いが湧いてきてしまう。

 そして目の前にいるその姿は、どことなく、いつもの美冴さん特有な、あの憂いの翳の表情等は全く見受けられず…
 いや、美冴さんなのではあるのだが、全く、別人の美冴さんなのだ。

 もしかしたら…

 この黄色い向日葵の天使のこの姿、佇まいが、本当の美冴さんの姿なのかもしれない…

「はぁぁ…」
 わたしはあまりの眩しさに吐息を漏らしてしまう。

「カニっ、お届けにまいりましたぁ」
 すると美冴さんは、そんなわたしの戸惑いの想いなどは全く感じておらず、満面に笑みを浮かべながらそう戯けて言ってきたのである。

 ドキドキドキドキ…

 それがまた、かわいいのだ…

 本当に天使の微笑みだわ…

 そして、そう戯けている美冴さんの脚元には、白い発泡スチロールの箱が二つ置いてあったのだ…





 

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