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シャイニーストッキング

第3章 絡まるストッキング2 美冴

 10 互いの着信

「それに…乗りかかった船だからな…」
 わたしは思わず彼を見つめる。

「でも…
   泥船かもしれないわよ…」

「その時は、一緒に沈むさ…」

「……………」

 わたしはその彼の言葉に心が震えてしまったのである。
 そして彼の胸にしがみ付く。

 ヤバい、愛してしまったかも…
 彼のそんな大人の優しい気持ちに心が魅了されていくのがわかったのだ。
 すると、彼の手が優しく肩を撫でてくるのである、わたしはその手の感触に心が震えてくるのであった。

 ああ、また抱かれたい、愛されたい…



 ブー、ブー、ブー、ブー…

 その時、わたしの携帯電話が着信をする。

 ディスプレイを見ると知らない番号であった、だが、これは多分健太からの電話であると思われたのだ。
 時刻は午後11時を過ぎている、ちょうどカラオケが終わって解散したタイミングであろうと予想できる時間である。

「出ないのか…」
 大原本部長は意味あり気な目をしてそう云ってきた、多分、電話が誰からだか予想できている目であったのだ。

「うん…、知らない番号だし…」
 わざとそう云ったのである。


 ブー、ブー、ブー、ブー、ブー…

 すると今度は大原本部長の携帯電話が鳴った。
 この着信は誰からなのか考えなくてもわかるだ。

「……………」

「出ないの…」
 敢えてわたしはわざとそう訊いたのであった。

「うん、後にするわ…」
 苦笑いをしながらそう云う。

 せっかくの幸せな時間が、この電話の着信で終わりを告げられてしまったみたいであったのだ。
 いや、強制終了の合図なのかもしれなかった。

 すると、本部長はわたしをグイっと抱き寄せてきたのだ。

「あんっ…」
 そして唇を寄せてきた。

「…あ………」
 そのキスに再び心が蕩けてしまう。

 ズキ、ズキ、ズキ、ズキ…

 また、胸が昂ぶってくる。
 だが、もう、この昂ぶりは安定した昂ぶりである、多分、今夜は彼のおかげで落ち着きを取り戻したようである。
 
 そしてわたしはスッと唇を離し
 「シャワーを浴びて帰りますね…」
 そう云ったのだ。

 それには、今夜はこれで終わり、という意味を込めたのである…




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