戦場のミハイル
第6章 ニコライ議員の私邸
「私の居た前線も酷かったな、最後にいた場所は結局壊滅してしまった
私は無様に生き残ってしまった…」
ガリーナも2年前のことを思い出す
あれ、そういえば…
最後、瀕死の私を抱きかかえてくれた若い兵士はなんとなくミハイル・グリンカに似ていたな…
今もあのときの感触を覚えている
〈もう、だいじょうぶだよ〉
落ち着いた若い男の声
まさか、な
全身ボロボロになった数年前の自分
よくもここまで回復したものだ
「料理長、美味しいよ、生きてるって感じる」
「ありがとう、食事は素晴らしいだろ」
ふたりがしみじみとしながらもゆっくりした時間を楽しんでいたとき、食堂のほうに誰かが入ってきた気配がした
ミハイル・グリンカだった
寝間着にガウンだけを羽織っている
「料理長? まだ残ってたんだね
何かあるかい?」
「み、ミハイル様ッ!?
すぐにご用意してお部屋へお持ちします!」
「いいよ、ここで
ガリーナさん…だったね
彼女が食べているもの、まだある?」
「……いえ、あの……これはまだ試作段階でして……」
「良かったらボクにも分けてもらえる?」
「そんな……、ちゃんとした料理をすぐにご用意致します」
「料理長、ボクは貴族階級じゃない
先週まで前線に居たただの軍人だ
インスタントでいいんだ」
「ミハイル様は軍人であらせられますが、一方ではニコライ様とマリア様の客人でございます
私が叱られます」
「だいじょうぶ、今は腹を空かせたただの男だ」
ミハイルは笑ってガリーナの隣の椅子に座った
ガリーナは今のミハイルの〈だいじょうぶ〉と言う言葉が耳に残る
〈もう、だいじょうぶだよ〉
隣の若く見える男性は自分を引きずり出してくれた兵士なんだろうか?
ガリーナはいけ好かない間男のようなミハイルをどう位置づけて良いのか迷っていた
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