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ほしとたいようの診察室

第9章 ひとときの外出



……




買い物かごを持とうとすると、さっと横から手が伸びて、陽太先生がカゴを優しく奪う。


聴診器も注射器もカルテも持っていない、陽太先生。

手にしているのは買い物かご。
すらっとした身長に、カゴは幾分か小さく、カゴを持つ手はいつも以上に逞しく見える。

思わず笑ってしまったわたしに、陽太先生は不服そうに尋ねる。


「なにさ」


「いや、なんでも」



それでも笑うのをやめなかったわたしの頭を、不意に陽太先生が撫でる。



完全に油断していたので、見事に撃沈した。



照れ隠しに、先立って歩く。






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