ほしとたいようの診察室
第7章 回想、主治医の苦悩
のんちゃんは、ひとしきり花冠を愛でたあとに、俺に言った。
「よーたせんせい、おてて、だして」
「ん?」
右手を差し出すと、
「んーと、おちゃわんのほう!」
左手をご所望したので、言われた通りにする。
「あのね、ゆびわつくったの。のんちゃん、おひめさまだから、よーたせんせーはおうじさま」
言いながら、俺の左手薬指に、小さな手でシロツメクサを巻きつけた。
……結婚指輪の位置だ。
幼いながら、大人をよく見てるんだなぁと感心する。
「陽太先生が王子様でいいの?」
のんちゃんは、嬉しそうに頷く。
この歳の子は、ごっこ遊びが好きである。
しかしながら俺は、初めてのんちゃんがくれたプレゼントに心から感動してしまっていた。
のんちゃんが作った指輪は、シロツメクサを結んで繋げただけの簡単なものだったけど……
これほど嬉しくて、大事なプレゼントは他にない。
柄にもなく、涙が出そうなくらいに嬉しかった。
いままでの、大変だった日々が帳消しになるくらい、子どもからもらうプレゼントはなんだって嬉しいのだ。
「ありがとう、のぞみお姫様」
のんちゃんの顔を覗き込んで言うと、のんちゃんは照れくさかったのか、
中庭を走り出した。
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